菅 直人 内閣総理大臣へ 「提言」
幼児・妊婦の疎開と緊急支援を。
原発事故と今後を憂うるサイエンティスト有志が提言。
�大気中の放射線量はいわき市、川俣町、飯館村では甲状腺の内部被ばくは恐れべき高濃度である。幼児・妊婦の疎開 緊急支援を用意すべきである。
�子供たちの生活空間である学校敷地、通学路、公園について早急なる除染を行う必要がある。
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提言書
内閣総理大臣 菅 直人殿
東北沖に起こった巨大な地震と津波の激甚災害、その対策に尽力されていることに敬意を表します。その上、福島原発に空前の放射能拡散の巨大惨事が発生し、日夜、苦慮、対策に奔走されておられるご苦労とご心痛を拝察申し上げます。
私どもは多年、原発の技術的危険性と事故発生による放射能の恐怖を指摘し、原発に依存しない社会をと願ってきました。今回の惨事には言葉も出ません。「安全神話」にすべてをゆだね、疑問と批判を無視して原発推進してきたことに対しては機会をあらためて論ずることとして、当面の緊急対策について私たちの危惧と提言をさせて頂きます。
すでに信じがたいほどの放射能が拡散しています。その上、事故原発の状況も不透明、収束の見通しも立っておらず、今後も異常事態の重なる危険はいまだ消えていないようです。この状況の中で、近隣住民への放射線被曝の不安解消への真剣で具体的対策を強める必要があります。とくに子供と妊婦には慎重な配慮と施策が求められています。
(1) 現在、公表されている大気中の放射線量や甲状腺の内部被曝量は恐るべき高水準にある。30�圏外飯舘村や川俣町、いわき市などでも、その現状は危惧ですますことのできない高レベルの汚染である。まず緊急対策として幼児・妊婦の疎開に政府は責任をとり、そのために経済的支援を用意すべきである。
(2) 学校敷地、通学路、公園など子供の生活空間・敷地については、早急なる除染の作業を行い、被害軽減の対策を進めることが必要である。
以上提言するに当って、現状の放射能汚染の深刻さに注意を重ねて喚起しておきたいと思います。従来より、放射能の危険から従業員と公衆を守るため、法令によって、「管理区域」を定め、事業者に業務遂行上の必要のある者以外の立ち入りを禁止させています。管理区域は「3ヶ月につき1.3m㏜を超えるおそれのある区域」と定められていますが、時間当たりにすると0.6µ㏜となります。公表されている大気中の放射線量だけに限っても広範囲の地域が長期にわたって、高濃度の汚染です。たとえば浪江町(赤宇木)では25.3µ㏜/h(4月16日現在)ですから、規制レベルの実に40倍を超えています。遠く福島(1.87µ㏜/h)、郡山(1.82µ㏜/h)でも約3倍の高水準の汚染です。妊婦や幼児がその地域に生活し続けている事実に注目し、深く憂慮いたします。
現実的政策には多くの困難のあることは承知しておりますが、妊婦と幼児への対策として、高濃度汚染地域から可及的速やかに実施されることを、重ね重ね強く提言したいと思います。
2011年 4月 18日
原発事故と今後を憂うるサイエンティスト有志
石田 紀郎、今中 哲二、荻野 晃也、海老沢 徹、川合 仁、川野 眞治、小出 裕章, 小林 圭二、柴田 俊忍、高月 紘、槌田 劭、中地 重晴、原田 正純、松久 寛
連署者紹介
石田 紀郎 元京都大学教授 現市民環境研究所代表理事
今中 哲二 京都大学原子炉実験所助教
荻野 晃也 元京都大学講師 現電磁波環境研究所主宰
海老沢 徹 元京都大学原子炉実験所助教授
川合 仁 現代医学研究所代表 医師
川野 眞治 元京都大学原子炉実験所助教授
小出 裕章 京都大学原子炉実験所助教
小林 圭二 元京都大学原子炉実験所講師
柴田 俊忍 京都大学名誉教授(機械工学)
高月 紘 京都大学名誉教授(環境保全学)
槌田 劭 元京都精華大学教授 使い捨て時代を考える会
中地 重晴 熊本学園大学教授 環境監視研究所代表
原田 正純 元熊本学園大学教授(水俣学)医師
松久 寛 京都大学教授(機械理工学)
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